鋳物ホーロー浴槽が生まれる物語

広島県安芸高田市・吉田工場。 ここでは、熟練の職人たちが、鉄と日々真剣に向き合いながら仕事に取り組んでいます。
彼らの手の中で、一つの鋳物ホーロー浴槽が形になるまでには、いくつもの工程と確かな技術、そして、熱い情熱が詰まっています。 鋳物ホーロー浴槽は、丈夫な鋳物を成型する「鋳造」と、美しい光沢を纏わせる「焼成」の二つの大きな工程によって完成されます。
鋳造工程
1. 溶解
約1500℃の高温で、鉄が赤く燃えながら液体へと変わる瞬間。 鋳鉄づくりは、鉄にカーボンやシリコンなどの副原料を加えたところから始まります。 鉄ではなく鋳鉄を選ぶ理由は、その優れた鋳造性にあります。複雑な形状にも均一に流れ込み、なめらかな曲線や繊細な造形まで美しく再現できるため、浴槽にとって理想的な材質と言えるのです。

2. フィルム成形
浴槽の模型に、厚さ0.1mmの極薄フィルムを密着させ、繊細な形状をかたちづくります。美しいラインを描き出すための、欠かせない工程です。
3. 造型
造形枠の中に砂を充填し、空気を抜いて真空状態に。 砂をしっかり固めて鋳型を作る工程は、浴槽の“骨組み”づくりとも言えます。

4. 鋳込み
液状となった鉄が鋳型の中へ。 次第に、浴槽の形がゆっくりと現れていきます。

5. 冷却・型ばらし
十分に冷却された鋳物を型から取り出すと、初めて「浴槽」の姿が現れます。
6. ショットブラスト処理
浴槽の表面に鉄球を打ちつけて不純物を除去。 この処理はホーローとの密着性も高め、次の工程の下地づくりでもあります。
焼成工程
7. 下引き釉薬吹き付け
粉砕した釉薬(下薬)を浴槽表面へ。 スプレーガンで吹き付けた厚さ0.1mmの釉薬が、素地とホーローをつなぐ大切な役割を担います。

8. 釉薬振りかけ
真っ赤に焼けた鋳物に、職人たちが手作業でパウダー状の釉薬(上薬)を振りかけます。 この工程を数回繰り返すことで、ホーローの厚みは約1mmに達します。 浴槽が、輝きと美しさを手に入れる瞬間です。

9. 焼成
焼成炉の中で、釉薬と鋳物が一体となる。 その姿は、炎の中で誕生する工芸品のようです。

11. 最終製品検査
職人の厳しい目による最終チェック。 品質が守られていることを一つ一つ丁寧に確認していきます。

12. 梱包・出荷
浴槽は木枠で丁寧に包まれ、全国のお客様のもとへ。 職人の技と想いを乗せて、次の暮らしの場へと旅立ちます。
この工程のすべてに、妥協なき技術と想いがあります。
ぜひ、工場見学でその息づかいをご体感ください。