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浴槽通信
2025年8月1日
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  今日から使える!一番風呂を味方にする入浴テク

「一番風呂は馬鹿が入る」「年寄りに新湯は毒」といった言い伝えを耳にしたことはありませんか?一見すると根拠のない迷信にも思えるこれらの言葉ですが、実は科学的にも裏付けがあるのです。

今回はその理由と、現代でも取り入れられる快適な入浴の工夫について、入浴指導士・石川さんに詳しく伺いました。

「入浴指導士の石川です。今回も引き続き登場させていただきます!今回は、『一番風呂は本当に身体に良くないのか?』という疑問をテーマに、

① 一番風呂が身体に悪いとされる理由

② 実際に起こりうる影響

③ 一番風呂を快適に、身体に優しいものへと変える方法 

この3つのポイントについて、分かりやすくお届けします。 読み終わった頃には『なるほど、今日から試してみよう!』と思っていただけるはずです。」

なぜ一番風呂は身体に良くないのか?

まず、一番風呂とは、お湯を入れたばかりで誰も入っていないお風呂のこと。つまり、お湯の成分は水道水そのものということになります。日本の水道水は非常に質が高く、安全性も申し分ありません。

しかし、「水道水で満たされた湯船に最初に入る」ことが身体にとって刺激となるケースもあるのです。主な原因は「浸透圧」「塩素」です。それぞれご説明します。

●浸透圧の違い

日本の水道水は、いわゆるミネラルなどの混合物が少ない「軟水」が一般的です。一方で、人体は体液中にたんぱく質やミネラルをはじめとする様々な成分が含まれていて、水道水と比べるとずっと濃くなります。水道水のお風呂に入った時に、人体との液体の濃度の違い、つまり「浸透圧」の作用による皮膚への悪影響が起こる恐れがあるのです。

水道水の浸透圧は、人の体液よりも低いため、水分が皮膚内(角質層)へ移動しやすい状態になります。長湯をすると指先がふやける現象は、このためです。角質細胞間に水分が侵入すると、角質の保湿システムが崩されて乾燥肌を招くリスクもあります。

残留塩素による刺激

水道水には殺菌のために塩素が含まれています。一方で、皮膚が荒れていてバリア機能が低下している場合などは、残留塩素の刺激が皮膚細胞に悪影響を及ぼす可能性があります。実際に、水道の塩素濃度が濃い場合、皮膚に悪影響を与える、といった報告があります。

それなら二番風呂の方が良いの?

実はその通り。誰かが入浴すると、湯の中に皮脂や汚れが溶け出し、わずかにお湯の浸透圧が上がります。

さらに、塩素は時間が経つことで揮発し、肌への刺激も緩和されるため、二番風呂の湯ざわりが柔らかく感じられるのです。

一番風呂でも快適に入る工夫

一人暮らしや入浴順番の都合で一番風呂になる方も多いはず。そんなときにおすすめなのが、入浴剤や薬草湯の活用です。一番風呂に人為的にプラス成分を湯に溶かすことで、浸透圧を調整し、塩素の刺激を軽減する効果があります。

特にビタミンC入りの入浴剤は塩素の中和に効果的。また、冬至の風習として知られる柚子湯も有効です。柚子の皮に含まれる成分が肌に保湿膜を作り、冷えを防ぐだけでなく、塩素による刺激も和らげてくれます。

尚、弊社の鋳物ホーロー浴槽の入浴剤の使用可否については、下記ページに掲載していますのでぜひともご覧ください。

>>FAQ「入浴剤は使用できますか?」

昔の言い伝えには、理由がある

「年寄りに新湯は毒」という昔の言葉も、科学の視点で見ると納得できる意味が見えてきます。迷信と思われがちな言い伝えも、実際には生活の知恵として活きていたのかもしれません。

現代の技術と伝統の知恵を組み合わせることで、より健やかな入浴時間を楽しんでみませんか?

【お話を伺った石川さんのプロフィール】

2008年に大和重工㈱入社後、住宅機器営業部にてホテル向けの営業を展開。ホテルの特長にあったカスタムメイド浴槽の開発に携わっている。営業での豊富な経験を活かし、健康促進やリラクゼーションに寄与する入浴文化を育むことをポリシーに、2024年 日本入浴協会認定 入浴指導士取得。